長く社会人生活を続けていると、会議の進行役を任される場面があるかもしれません。
今回は会議の進行役をそつなくこなすことをテーマにします。
さて、会議の進行役に求められることは何でしょうか。
それは、その会議において結果を出すことです。
会議は必要があって開くものです。
したがって、必ず会議には達成すべき目的があります。
そのため、進行役は、その会議で何を達成するのか目的を立てなければなりません。
そして、目的達成のために粛々と会議を進行していきます。
まず会議を始める前に準備をしなければなりません。
準備には以下のものがあります。
会議を開くからには目的があります。
その会議を開くことによって、何を得たいのかがわかっていなければなりません。
会議の目的には以下のようなパターンがあります。
目的には、「まずはたたき台としての案をいくつかだしてまとめ、それを次回の会議でさらにもんでブラッシュアップする」という場合もあります。
特にテーマが大きく、最終目的に到達するためにはいくつかの段階を踏まなければならない場合には、このように小さい目的が設定されます。
目的を決めたら、必ずその会議で達成しなければいけません。
目的を設定せずに緩慢と会議を進めても、何を話し合っていいのかわからず、話は脱線してしまいます。
それでも時間はそれなりにかかるので、会議をやったような気分になり、進行役は満足してしまいます。
ところが、後になって考えてみると何も残らないので時間の無駄遣いになってしまいます。
会議を開くからには、一定の結果を出さなければ意味がないのです。
もちろん、時間には限りがあるので、常識的な範囲で目的を設定しなければなりません。
その会議中に決められないような量又は質の目的を設定しても、絵に描いた餅で終わります。
一度の会議に費やす時間が2時間だとすると、その場で考えて答えを出すことができる議題はせいぜい3つが限界でしょう。
その会議中に結論を出せるか否かは、会議に参加するメンバーにどれだけの情報を与えられるかにもよります。
会議に参加して初めて情報を与えられた場合、すぐに意見を思いつけない人もいます。
ですから、事前に各自で意見を考えてきてもらい、それをみんなでもんでいこう、という形にしておけば、進行はよりスムーズになります。
その際も、ただ問題を提起して意見を考えるように指示する方法と、予めこちらである程度のたたき台となる意見を提案して、選んでもらったりよりいい意見を考えてきてもらったりする方法があります。
こうすることで、より内容の濃い会議にすることができます。
レジュメは会議の時の目安になるものです。
日付、場所、時間、メンバー、目的(テーマ)、議事などが書かれています。
それをみれば、何をするのか、ある程度の進行がわかるようになっているものです。
ただし、レジュメに詳細を書きこむ必要はありません。
あくまでも進行の目安になるものですので、簡潔に議題などの必要事項が箇条書きになっていればいいでしょう。
ただし、事前に会議参加者に意見を考えてきてもらいたいのであれば、どういうことを議論したいのか、ということがわかるような資料が必要になります。
これはレジュメに書いておいてもいいし、レジュメとは別に資料を用意しても構いません。
会議の進行をそつなく行いたいのであれば、レジュメは自分用と配布用の2種類を用意します。
配布用のレジュメは先述したように、必要な情報をかいつまんで箇条書きにした内容が載っています。
こうすると大体A4用紙1枚でまとめられます。
一方、自分が使うレジュメには、箇条書きにした議題のほかに付加情報を書いておきます。
付加情報とは、詳しいデータや自分なりに調べたこと、自分の意見、疑問などです。
会議の進行役を担うわけですから、このように自分から提供できる情報を予め多めに確保しておくと、きちんと調べてきていることのアピールにもなります。
また、話した内容をほかのメンバーがレジュメに書きこむことで、あなたがその会議の主導権を握っていることを意識させることができます。
会議を始めても、最初は意見が活発に出ないことはよくあります。
それは、会議の議題がよくわからないことについてだったり、先陣を切って意見を述べて、見当違いだったら恥ずかしいと思っていたりすることが原因です。
そこで、あなたは予めたたき台としての意見を用意しておきましょう。
会議をするといっても、すべてを参加者に決めてもらうことは難しい場合もあります。
そんなときには、この中から決めてください、このデータを参考にして述べてください、というような指標となるものを用意してあげましょう。
たたき台や資料があると、「いやそれは違う」「さらにこうしたほうがいい」といったような意見が飛び交うようになります。
ですから、たたき台として出す意見が、実は見当違いだったということでも構わないのです。
要は、誰かが意見を述べやすくするための仕掛けを用意する、ということです。
ところで、たたき台となる意見は、最初から意見が活発に出てくるのであれば、まずは発表しなくても構いません。
もし、自分が考えているものとずれているな、というようなときには、そのたたき台を出してみることもいいかもしれません。
会議の進行役の役割は、裏方の役割も必要です。
例えば、会議室を設定することもその一つです。
人数がきちんと収まる会場を用意し、当日お茶が必要であれば、それも手配しておきます。
会場で使うことになるであろう機器類も用意しておきましょう。
これらには、電源タップやプロジェクターなども含まれます。
また、自社内で行う会議で、外から参加者を招く場合には、社内に道案内の掲示を設置しておくべきです。
もちろんトイレの場所なども会議が始まる前にそれとなく参加者に案内しておきましょう。
会議を設定したら、参加者に周知します。
周知するには、レジュメを配布することはもちろん、予め考えてきてほしいことややってきてほしいことを伝えることも大事です。
もし1週間前に通知したのであれば、念のために前日にもう一度通知してもいいでしょう。
さて、会議当日は進行役が会議を回さなければなりません。
もちろんあなた一人が発言しているだけでは、会議は成立しません。
会議はそこに参加しているメンバー全員が、必要だから集められています。
ですから、全員が何かしら役割を担っていると考えてください。
実際は、いてもいなくても同じという人もいるかもしれません。
だからといって、その人をのけ者にするのではなく、満遍なくメンバーが参加できるように導かなければなりません。
参加したメンバーの中に役に立たない人がいたかどうかは、会議が終了してから考えればいいことです。
さて、参加者には、何もしなくてもどんどん発言してくる人、考えをまとめなければ発言できない人、意見は持っているけれど積極的に話そうとしない人、話すタイミングの遅い人、他の人の意見をなぞらえるだけの人など、様々な人がいます。
進行役にとってみれば、どんどん発言してくる人は、ありがたい存在かもしれません。
しかし、そのような人にだけ話をさせていたら、全員の意見を集めることはできません。
その会議の結論も一人の意見が左右することになってしまいます。
進行役は会議が設定時間よりも早く終わってしまうことを恐れる傾向にあります。
活発な意見がでないまま、適当に終わってしまうことは、本当にその結論でいいのか、という疑問を生んでしまいます。
ですから、どんどん発言してくれる人がいると、議論が白熱しているかのような錯覚に陥り、脱線してようがそのまま続けさせてしまうことがあります。
しかし、これは目的がきちんと設定されていない、もしくは目的を理解していないために起こる問題です。
目的が明確であれば、脱線させる人がいても、適当なところで話を切ったり、軌道修正することができます。
進行役の最大の役割は、目的の達成です。
情報が少なければ補てんし、脱線すれば軌道修正します。
発言の少ない人がいれば、その人にも話を振ります。
また、事前にもらった意見は必ず会議で紹介して、本人に詳細な説明をしてもらいましょう。
このほか、声の小さい人、発言が積極的でない人の中にも、よい意見を持っている人はいます。
そういう人のサインを逃さないようにしましょう。
人によってサインは異なりますが、話す人の目を見ている人には、それなりの意見を持っている人がいます。
「この人はあまり話をしていないけれど、よく人の話を聞いているな」という人がいれば、試しに話を振ってみましょう。
そのときの反応によって、次回から話題を振るか降らないか決めても構いません。
積極的に話さない人にも理由があって発言してないことがあります。
例えばいい考えを思いついだけれど、既に次の話題に移ってしまっている場合です。
そういう人に発言を求める場合には、「前の議題でも構いません。何か意見はございませんか」とたずねてみましょう。
このように相手が発言しやすい状況をつくっていくことも、進行役の大事な仕事です。
ある程度のところで、「では~ということでいいですか」というように、まとめや結論に導きます。
そこで否定的な意見を言う人がいれば、その人にどうすればいいのか解決策を求めます。
その人が納得するか諦めるまで、その人にクローズアップしてみるのも一つの手です。
「Aさんから~という意見が出されましたが、いかがでしょうか」と順に参加者を指名して意見を募りましょう。
意見をまとめるときには、必ず、「~ということに決まった」と宣言をしましょう。
こうすることにより、それまでの議論に一区切りつきます。
議事録を記録する側にもわかりやすくなります。
そして、次の議題に移ります。
もう一つ重要なことに、進行役は決して熱くなってはならない、ということがあります。
参加者の中には、意見を述べるうちに熱くなってきて、自分の考えが正しいと思い込むあまり、怒りだす人もいます。
それに呼応するようにけんか腰になるのではなく、あくまでも中立の立場で冷静に対応しましょう。
熱くなってきた人に対しては「なるほど、~ということですか」と一旦受け止め、それから周りの人に対してどう思うか意見を求めます。
気をつけたいのは、このように熱くなる人というのは、その会議を掌握してしまう可能性があるということです。
他の参加者が、「この人とはやり合いたくない、関わりたくない」と思ってしまうと、不本意であっても賛成してしまうことがあります。
こういう人への対処法についてはまた別の機会に考えます。
会議を行ったら議事録もとらなければなりません。
記録するためには、会議を録音しておくことは重要です。
また、節目節目で、結論などは自ら書き留めることも大事です。
議事録の書き方としては、レジュメに沿った形で書いていきます。
まず議題があり、そして結論を書きます。
そんなに複雑な問題でなければ、結論だけで構いませんが、場合によっては、その結論となった経緯や、出された意見も書き出しましょう。
議事録と進行役の二つを務めるのは負担が大きいので、議事録担当は別に設けるといいでしょう。
他に議事録担当を用意できなかった場合には、進行役が後で録音を聞き返して記録することになります。
議事録が完成したら参加者全員に送ります。
そこで、「こういう意見も言ったので載せてほしい」という人がいれば、検討しましょう。
修正したら、もう一度修正版の議事録を全員に送ります。
議事録は当日もしくは翌日には完成していることが望ましいです。
議事録作成に1週間もかけていては、参加者のやる気がそがれてしまうかもしれません。
さて、あなたが進行役である場合、意見は述べなくてもいいでしょうか。
そんなことはありません。
あなたが進行役だから、会議参加者に意見を述べさせて、自分は意見を述べる必要がないわけではありません。
もちろん、あなたが延々と話していてほかの人の話ができなくなったり、あなたの意見を認めさせようとしたりするのはいけません。
話をするのは、議論が活発になっていないとき、脱線していると感じたときです。
また、「これに関しては既に方針が決まっている」ということについても、述べて構いません。
進行役はかじ取りをするのが役目ですので、かじを取るための意見は述べても構わないのです。
さて、会議が無事終わりました。
議事録をまとめてみんなに配ったら終わり、でいいのでしょうか。
そんなことはありません。
あなたが会議に不慣れであるならば、必ず反省をしましょう。
簡単な反省方法は、録音を振り返ることです。
恥ずかしい思いをしたという気持ちがあるのであればもちろん、自覚がない場合でもふりかえりをすると発見があるはずです。
自分がどんな風に進行したのか、どんな発言がなされたか、発言しない人はいなかったか確認しましょう。
そして、どこか悪い点はないか、よかった点は何か書き出してみましょう。
そうすることで、次回から気を付けるべきことや対策を練ることができます。
このように、会議をうまく回せるようになるには、「準備をして、実践をして、反省する」ということの繰り返しが重要です。
この繰り返しを何度も行うことで、会議を回すことにも慣れていきます。
いろいろな人への対応の仕方も学んでいけます。
最初は、「自分には難しい、できない」と思っていても、場数を踏んでいくことで経験値が増え、いつの間にかできるようになっています。
緊張するのであれば、緊張していてもできるような事前準備をすることです。
このように、事前準備をきちんとすること、場数を踏んで慣れること、の2点を行っていれば、自然と会議を回すことは怖くなくなるでしょう。