会社で困った時に助けれくれる人には、本当に困っているときのみ解決するための手助けをしてくれる人と、どんな些細なことでも頼めばやってくれる人がいます。両者は似て非なるもので、前者は頼りになる人、後者は頼みやすい人、ということになります。
誰に聞いてもわからず、自分でも解決策を見出すことができないけれど、この人に聞けばたちどころに解決してくれる、そんな「最後の切り札」的存在の人のことです。
「この人がいれば間違いない。必ず何とかしてくれるだろう」と思われている人も、「頼りにされる人」になります。
頼みやすい人とは、何を頼んでも「はいはい」と二つ返事で代わりにやってくれる人のことです。
頼みやすい人には、自分でもできるけど面倒くさい仕事(=雑用)なども沢山舞い込んできます。
何しろ、断られないので、次から次へと頼んでしまうのです。
人にものを頼む人の中には、まるで詐欺師のように頼んでくる人もいます。
世の中には請求書詐欺という詐欺があります。
適当な会社に遣ってもいない代金の請求書を送りつけ、間違えて振り込んでしまうのを狙う方法です。
「詐欺だ」と訴えられても「間違えて別の会社に送ってしまった」と言い訳をすれば、裁判沙汰を避けられます。
つまり、ダメ元で送りつけて100社に1社、うっかり振り込んでしまう会社がいれば儲けもの、というやり方です。
それと同じように、ダメ元で何でも頼んでくる人がいます。
受けてくれれば儲けもの、という感覚です。
片っ端から頼んで、「こいつはどこまでやってくれるのか」という品定めをしているともいえます。
もしあなたが、誰でもできるような雑用を頼まれたり、明らかに別の部署の人の仕事なのに押し付けられたり、自分でやるべきことなのにあなたがやらされていたりするのであれば、どうやらあなたは「頼みやすい人」だと思われているようです。
「頼りにされる人」になることは、社会人生活では重要なことです。
なぜなら、「あなたがいなければ困る」という状況を作り出すことができるからです。
いなければ困る人を、そう簡単に動かすことはできません。
あなたが今の部署に居心地の良さを感じているのであれば、その部署において、不可欠の重要な人物になった方が、あなたのためになります。
「いなければ困る人」になるためには、その部署の仕事に精通していなければなりません。
特に、他の人が苦手としていることについて、得意な人になるように心がけてみましょう。
例えば、コンピュータに詳しい人がいない部であれば、その部において最もコンピュータに精通した人になりましょう。
誰かが質問してきたら答えられるようにしておくのはもちろん、あると便利なソフト(Excelでも構いません)を自作して業務に組み込んでしまうと更にいいです。
もしわからない質問をされたとしても「わからない」と答えるのではなく、分かるまで調べて教えてあげると、感謝されるだけでなく、自分の知識量も増えていきます。
こういったことを繰り返していると、あなたはその分野においてエキスパートになります。
そして、その地位を、社会の誰もが認めるレベルにまで高めましょう。
あなたが新入社員であれば、他の人からの仕事は何でも受けてしまうかもしれません。
会社に溶け込むには、仕事ができると認められることと、人の役に立つことで認められること、の2つの方法があります。
「仕事ができる」と認められるには、会社で与えられた仕事をすばやく、そして期待以上の出来で仕上げることが重要です。
しかし、人はそんなに何でもうまくやることはできません。そういう人が認められるためには、人の役に立つことをしましょう。
つまり、困っている人を助けるということです。
「困っている人を助ける」という行為を繰り返していると、最初のうちは頼りになる人だと思われて、ありがたい存在だと認識されます。
しかし、人にものを頼む人の中には、本来自分でやるべきことなのに、わからないから丸投げしようとしたり、頼む人が違うのに、頼み辛いのであなたのところに来てしまったりする人がいるのです。
もし「頼みやすい人」になってしまったら、自分の仕事ができなくなっていきます。
自分がとても忙しいのにも関わらず、他の人はあなたが忙しいことなど知らないので、平気で雑用を頼んできます。
あなたは断ることができないので、すべて受けてしまい、仕事が回らなくなり、評価が下がってしまいます。
「頼みやすい人」になることを避けるためには、断ることです。
あなたが「頼みやすい人」だと思われないようにするためには、断ることです。
とはいえ、最初から断ったり、断り方が悪かったりすると、たちまち感じの悪い人になってしまいます。
そこで断り方を工夫する必要が出てきます。
まず、あなたが本当にできないときには、とても忙しくて他のことをやっている暇がない、と正直に伝えましょう。
「申し訳ありませんが、今とても忙しくて他のことに時間を割けそうにありません。他の人に頼んでください」
むげに断り辛いというのであれば、いつから始められるのかを伝えます。
「申し訳ありませんが、今とても忙しくて他のことに時間を割けません。その仕事に手を付けられるようになるのは3週間後です。それでもいいですか」
この場合は、断るというよりは暇になるまで待ってもらうことなので、結局はあなたがやることになってしまいます。
それでも相手がそこまで待っていられないような長期間を設定すれば、相手はあきらめるかもしれません。
相手は、あなたでなければダメと言っているわけではありません。
要するに、自分の仕事の肩代わりをしてくれる人がいればそれでいいのですから、他の人を紹介してあげればいいのです。
「それならばAさんの方が詳しいので、Aさんに聞いてください」
ただし、この方法は、Aさんに恨まれる可能性があります。
そこで、あなたが依頼者を連れて直接Aさんに声をかけて、「これってどうやるんでしたっけ」と聞いても構いません。
後は、Aさんと依頼者で直接やり取りしてもらえばいいのです。
断り辛いということであれば、やってあげるのではなく、「教えてあげる」という形をとることで、次から自分でできるようにしてあげるというのも、一つの手です。
この場合、直接その場で教えてあげても、覚えようとする人はあまりいません。
ですから、紙にまとめて、それをマニュアルとして置いていくとより効果的です。
自分の席を離れて、その問題が解決するまで相手に付き合わなければならないこともあります。
その問題が、自分の席を離れていなければいけないものであれば、この方法は使えませんが、例えばコンピュータの調整など、自分の席にいたままでも対応できる問題であれば、それを持ってこさせましょう。
相手の方が立場が上だとすれば、取りに行って引き上げてきましょう。
断れないとしても、自分の席でやることができれば、仕事の合間にそれに時間を割くことができるようになり、大幅に時間を取られることも少なくなります。
もし相手が自分の席まで来るのであれば、居心地の悪さを相手に与えることができます。
つまり、自分のホームタウンではなく、アウェイに来た感じになるということです。
すると態度も弱くなり、あなたは有利な立場で見てあげることができるようになります。
さらに、相手も一々持っていくのが面倒になるので、他の方法で解決することを模索するかもしれません。
この場合、「申し訳ないのですが、今席を離れて他の仕事を見る暇がないので、持ってきてもらえませんか」とでも言いましょう。
最終手段です。
あなたは、その人から質問を受けることにうんざりしています。
もう二度と聞きに来ないでほしい、そう思っているとしましょう。
こんなときにあなたがとるべき行動は、「わからないフリ」をすることです。
その場で、「すみません。それについてはまったくわかりません」と言って断ってしまいましょう。
ただし、言い方は丁寧に。
また、一旦引き取って、相手が聞きに来るまで放っておき、聞きにきたら、あれからずっと考えている、という感じで「すみません、今までずっと調べていたのですが、やはりわたしにはわからないようです」と言いましょう。
相手は、あれからずっとやっていてくれたなんて、申し訳ないという気持ちも芽生えるでしょうから、諦めてくれる可能性は高くなります。
もちろん、あなたはずっと調べている必要はありません。
ただ、ずっと調べていたフリをするだけです。
よくビジネス書などに「仕事では断る力をつけろ」などと書いてあることがあります。
断る力を身につければ、仕事がはかどり、仕事のできるビジネスマンになれる、と。
しかし、そういう本でも肝心の断り方については教えてくれません。
もちろん、場合によっては毅然と断る態度も必要かもしれません。
しかし、中小企業では多くの場合、なあなあで仕事が回っています。
その中で、一人だけ「筋を通してもらいたい」などと言っていたら、「感じが悪い」「堅物だ」「面倒臭い人」など、望まないレッテルを貼られてしまいかねません。
むげに断るだけが、断り方ではありません。
以上のように、やんわり断る方法も身に着けておいてはいかがでしょう。