大企業であれば、昇進することは多くに人にとっては念願のはずです。
自分の地位があがることは、収入が上がることでもあり、プライドがくすぐられることでもあるからです。
しかし、中小企業では、職位が上がることを嫌がる従業員は多くいます。
それは以下のような理由があるからです。
大企業であれば昇進=給料アップの図式が成り立つのですが、中小企業ではそうはいきません。
そもそも中小企業にはお金が潤沢にありません。
経営者は、そういう状況でできるだけ余計な費用は削減したいと考えています。
企業が容易に削減できるコストといえば人件費です。
実際に材料費などをコスト削減の対象にすることは、できないことではありませんが、かなり大変な労力が必要となります。
その点、人件費は、給料を下げて、その額に従業員が同意しさえすればいいのですから、比較的容易に変えることができます。
なぜなら、たとえ給料が下がろうとも、他の会社に異動することは、さらにリスクが高いことだからです。
管理職に上がったら、管理職手当などがついて、給与はアップします。
しかし、残業代はすべてカットされてしまいます。
もとより、残業代はまったくつかないという会社であれば、多少なりとも給与アップになるのでいいかもしれません(そもそもそんな会社はブラックですが)。
しかし、多くの場合、平社員では残業代がもらえていたのに、管理職になったらカットされてしまうことになります。
つまり幾ら残業してもその分の収入は増えないのでタダ働きになるということです。
会社としても、残業代や休日出勤代を支払う必要がないので、平社員よりも管理職に通常業務をやらせようとします(このせいで管理職がマネージメントとしての仕事に集中できないのですが)。
結果として、自分の部下よりも手取りが少ないという、おかしな現象が起こります。
管理職になると、「あなたは管理職でしょう」と、部下からも上司からも、それなりの責任を負わされることになります。
もし今まで、「わたしは管理職じゃないから責任はない」と思って仕事してきたのであれば、いきなり責任を負わされる重責というのは、かなりのストレスになるかもしれません。
責任を回避するような態度にでれば、「あの人は管理職のくせに何もしない」と陰で批判されてしまいます。
それを避けるには、自分ですべての責任を負うか、その言葉を全く気にしなくなるかの二つに一つです。
よくワークライフバランスという言葉を耳にします。
ワークライフバランスとは、仕事の時間と、プライベートの時間を快適な割合に保つことで、ストレスなく人間らしく生活するということです。
しかし、中小企業の管理職になると、多くの場合は、平社員と同じ仕事をしなければならないことに加え、平社員のしりぬぐいの業務まで加わり、残業時間は平社員のときよりも増えてしまいます。
それなのに、残業代はカットされてしまうので表には出ない業務時間が青空天井になってしまいます。
これでは、ワークライフバランスなどと言っていられません。
こういったことが嫌で、平社員は職位が上がることを極端に嫌がります。
働いたら働いた分だけお金をもらい、余計な責任は持たず、趣味の時間も適度に持ち、気ままに生きる、というライフスタイルを貫くには、平社員でいることが最適なのです。