「謙虚でいる」とは、どんなに褒められても、どんなに仕事の成果を上げたとしても、調子に乗らないということです。
すごい手柄を立てると、誰かに言いたくて仕方がなくなる人がいます。
何かの話の流れで「自分の場合は…」と話す分にはまだしも、いきなり自分から自慢話を始めたり、仕事において「わたしはこんなにすごい、それに比べてあいつは…」とか、「なぜ自分の評価が低いのか、あいつの方が仕事ができないのに」というようなことを、言うような人は、「あの人がおごり高ぶっている」と陰で囁かれて、評価は上がるどころか反対に下がってしまいます。
たとえば、別の部署の応援を要請され手伝ったとします。
たまたまその応援が自分のおかげでうまくいたときに、当の担当者から「あなたが手伝ってくれたおかげで、成績がすごくよくなった」と感謝されたり、「すごい」と褒められたとします。
このときに、「実は事前に準備をきちんとしていて、このように仕事をしたので、うまくいくという確信があった」というように、その高成績はあなたのおかげだとアピールしてしまうと、さっきまで感謝していた担当者は、あっという間に不愉快になり、あなたのことを「調子に乗っている」と思うでしょう。
そういう担当者のような人は、実際にはあなたに感謝などしていないのです。
手伝ってくれたので、礼儀として感謝しただけで、本当にあなたのおかげで成績がよくなったなどとは思っていません。
ある日応援で入ってきた人のおかげで急に成績がよくなるなんて、あるわけがないと思っているからです。
たとえそれが事実だったとしても、高成績だったのは、長年担当としてやってきた自分の実力だと思いたいはずです。
ところで、謙虚に振る舞わなくてもいい人というのは、あまりいません。
謙虚さを忘れた振る舞いをする人は、まず間違いなく嫌われています。
それが地位の高い人であったり、声の大きい人であった場合には、面と向かってモノを言えないので、許されているように見えるかもしれません。
しかし、そういった人も、必ず陰で嫌われています。
嫌われることを恐れていては、仕事はできないと思うかもしれませんが、傲慢な振る舞いでいらぬ敵愾心まで受ける必要があるでしょうか。
さて、傲慢に振る舞わなければ、すなわち謙虚になるので、たいていの場合はそれでうまくいきます。
しかし、より意識的に謙虚に振る舞う必要がある人というのがいます。
以下にそのタイプを示します。
無口でおとなしい人は、口下手でもあり、声も小さい傾向にあります。
口下手ということは、褒められたら、それを謙虚に処理することができず、褒め言葉を受けっぱなしにしてしまう可能性があります。
また、声が小さいということは、謙虚に話しても相手に聞こえていない可能性もあります。
相手と話す時は、目を見て話しましょう。
聞こえていないと思ったら、聞こえるまで話しましょう。
この基本を守ったうえで、謙虚な言葉が出るようにしておきましょう。
感情を表に出さない人というのは、ただ感情を発露させることが苦手なだけなのに「落ち着いている」などと言われる人のことです。
こういう人は、話し方がどこか尊大に見えてしまうことが多く、淡々と事実を述べているだけでも、自慢げに話していると思われてしまうことがあります。
意識的に謙虚に振る舞いましょう。
そのときに、笑顔などの表情を付けるように努力しましょう。
自分では気づかない人もいるので、もしかしたら今これを読んでいるあなたが、このケースに当てはまるかもしれません。
自分ではないと思っても、自己分析をしてみましょう。
おしゃべりな人は、つい長々と自分がどうやったのかを説明してしまいます。
おしゃべりな人はお調子者が多いので、長々と自慢話を人に聞かせてしまうことがあるのです。
自慢話ですら面白くないのに、それを延々やられたらたまったものではありません。
「自分なりに考えて行動したことが功を奏した」という内容を、このタイプの人が話すと、他のタイプの人が話すよりもしつこく聞こえてしまいます。
おしゃべりな人が、こういった話をするときは、「~さんのおかげでうまくいった」とか、「わけがわからないうちに終わっていた。結果は偶然だ」といったようなことを話の中に入れるように心がけましょう。
人として問題があると思われている人は、どんなに頑張っても評価されません。
「売り上げはあがっているけど、あいつの場合、まぐれだろう」と、実力があるとは認めてもらえません。
人として問題がある人とは、「ねじが一本抜けている人」であったり、「奇行が目立つ人」であったりします。
こういう人は、「成績向上=自分の実力」という考えを当然のように思い描きます。
しかし、なぜ売り上げが上がったのか?という疑問に、明確に「これがその理由だ」というものがあり、他の人がやっても、確実に成績が上がるというものがない限り、他の人は「あなたの成績向上=運が良かっただけ」という図式にしてしまいます。
もちろん、人として問題があるかないかというのは、自分では気づきません。
だから、自分はこのタイプではないとは言い切れません。
ある結果を出したら、なぜうまくいったのかを考え、理由が見つかったとしても、謙虚に自分を制しましょう。
まだ入社したばかりの人がいい成績を上げた場合、ベテラン勢にとっては面白くありません。
喜んでくれているからと言っても、内心は抜かされたくないと妬んでいるのです。
それなのに、自分は「こうやったからうまくいった」などと成功談を話したら、「ただのビギナーズラックだろう」と一蹴されてしまいます。
入社したばかりの人は早く認めてもらいたいので、自慢したがるかもしれません。
しかし、残念ながら先輩たちは「応援するけど、自分は超えないでほしい」と思っている人ばかりです。
「若いな~」の一言で済めばいいのですが、妬まれてはたまりません。
入社して日が浅い人と同様、他の部署の人は、手柄を立てたことを該当部署の人にアピールすると、該当部署の面目をつぶすことになるので、妬まれます。
先ほどと同じように「ビギナーズラックのくせに調子に乗っている」と陰口を言われてしまいます。
陰口を言われるだけならまだしも、面と向かって嫌悪感を示してくる人もいるかもしれません。
また、地位が上の人であれば、「そんなに言うなら、うちの部署で働かせてみよう」と異動を要請してくるかもしれません。
この場合、あなたは、自分の部署で手柄を立てたわけではありません。
だからそこまで手柄をアピールする必要もありません。
「やったことのない自分だってこれくらいはできるんだから、君たちはもっとしっかり仕事をした方がいい」などと言ってしまうのは、あなたの立場を悪くするだけで、該当部署の人たちの意識を変えるどころではありません。
「自分は何もしていない」と返事をしておけばいいのです。
さて、ここまで謙虚に振る舞うことの重要性を述べてきました。
しかし、謙虚に振る舞っていれば安全かというと、そうでもありません。
謙虚さを示すために選んだ言葉によっては、マイナスになってしまうことがあります。
例えば、「いやいや、僕なんか全然仕事できませんから」と、常に謙虚なセリフを言っていると、「あいつは何もやっていない」「仕事のできないダメなヤツ」と評価が下がってしまいます。
こういうことを避けるためには、謙虚に相手の褒め言葉を処理しておきながら、それでも自分のおかげでもあることをやんわりとアピールするような言葉を選ぶ必要があります。
「君のおかげで成績が上がったよ、すごいね」と言われたら、以下の3つのうちのいずれかにしておきましょう。
このような感じで言っておくと、謙虚であっても成績が上がったのは、自分が仕事をした結果であるということも否定していません。
つまり、自慢をせずに仕事をしたことをアピールすることができるのです。
いずれにしても、「何もやっていない」かのような返事をするのは避けましょう。