書類選考をして見込みがありそうだと感じた応募者には、次に筆記試験や面接を行います。
応募者の人数が多い時には筆記試験を先に行います。
ここでは、筆記試験について述べていきます。
まず、筆記試験には大きく分けて、市販されているものと自社で作成するものがあります。
市販されている試験とは、SPIのような決められた時間内に問題を解き、その回答速度や正答率から能力を測ったり、ある場面を想定した質問をして、その答えによってどのような性格であるのかを分析するものです。
こういった試験では、基本的な能力や知識を測るとともに、仕事をする上で、どのような職種や働かせ方が向いているかを判定することができます。
しかし、性格診断について言えば、幾らでも嘘をつくことは可能なので、真に受けるのも考え物です。
また、統計的に、最高得点と最低得点を出した人は、人格に問題があることが多いと言われており、選考から外した方がいいとされています。
SPIなどの適性試験で見るべきは、基礎能力の高さでしょう。
また、性格診断の結果、求めていない人物像が浮かび上がったのであれば、ある程度は参考になるかもしれません。
自社内で、仕事に直結する能力をみるための試験を作成し、それを解かせます。
即戦力として中途採用をする場合には、このような試験方法は有効です。
自社で試験をつくるには、まずどの部署に人員を採ろうとしているのかはっきりさせる必要があります。
もちろん、どのような人物がほしいのか、事前に検討を重ねて固めておくのは前提です。
そして、求める能力を測るための試験を作ります。
もちろん解答も用意します。
一つしか正解がないような単純に知識を図るものから、幾つも正解があるけれど、どうしてその答えになったのか理由を書かせるものまで、多種多様な問題を用意しておき、能力の高い人であるのか、思慮深い人物であるか、みることができるようにしておきます。
また、問題にケチをつけるような人がいた場合は、仕事でも屁理屈をこねて中々指示通りに動かない人かもしれないと推測できます。
このほか、作文を書かせることで文章力や構成力をみることもできます。
作文は内容が面白いだけではなく、誤字脱字がないか、意味が通る文章を書くことができるか、ということも併せてみることができます。
自社でつくる試験は、採用試験においてはとても重要な指標の一つになります。
作る場合には、しっかりと内容を検討して使える試験にしましょう。
さて、筆記試験では試験の得点だけを選考対象としていればいいのかというと、それだけではもったいないのです。
筆記試験中の応募者の振る舞いは、情報の宝庫です。
試験の時間に遅刻せずに来ることができたか、試験中に周りの人に迷惑をかける行為をしていなかったか、こちらが伝えた禁止事項や連絡事項を理解して行動できたか、人の言うことを無視して動く人か、ということを見ることができるのです。
ですから、試験中は暇になっている余裕はありません。
試験官としては、そういうおかしな振る舞いをする人がいるかいないか、逐一監視していなければならないのです。
そのためにも、席順はあらかじめ決めておき、どこの席に誰が座っているのか座席表を作って把握しておきましょう。
以前実際にあったことですが、ある男性が試験に10分ほど遅刻してきました。
その人は焦りながら席に座り、慌てて試験を解いていました。
すると、その男性の隣りに座っていた女性が、男性が慌てて鉛筆を走らせる音が気になったようで、「うるさい」と小声で何度も罵り始めました。
男性は約束の時間を守ることができない人、と判断することができ、またこの女性も試験中に勝手に私語を言うというルール違反をする人と捉えられます。
この2名は、ルールを守れず周りに迷惑をかける人ということで、採用に足る人物とは思えないと判断され、面接試験に進むことはありませんでした。
このように筆記試験中であっても採用の判断をする機会があります。
静かにデスクワークする場面で、遅刻したり怒り出したりするような人は、周りとうまくやっていくことはできないだろうと思われても仕方のないことです。
ですから、試験官を務める人は、それなりに批判的に監視する目をもたなければなりません。
ただ座って試験時間を伝えるだけが仕事ではないのです。
また善意だけで人を採用することができません。
厳しい目でふるいにかけることができなければ、良い人を採用できる確率は減ってしまうのです。