後輩や新人を教育する場合には、あなたは恐れられ、尊敬され、頼られる先輩でなければなりません。
基本的には、厳しく接することです。
しかし、かといって常に厳しくしている必要はありません。
厳しい時と優しい時と、緩急を織り交ぜて接していきましょう。
ここまでは、恐れられて尊敬されるために、厳しい態度で接する心構えに重点をいて述べてきましたが、今回は、優しく接することについて述べていきます。
仕事をしている以上、成果が上がるときと上がらないときがあります。
また、こちらが期待した以上の結果を出すこともあれば、期待に反した結果しか出してこないこともあります。
あなたは、これらの結果に対して、良い時にはきちんと褒めて、悪い時には注意しなければなりません。
こうして、どういう場合に褒められて、どういう場合に叱られるのかを、実際の行動を通して教育していくのです。
人には、褒めて伸びるタイプ、叱られて伸びるタイプがいます。
しかし、叱られて伸びるタイプだからといって、まったく褒める必要がないかというと、そんなことはありません。
ほめて伸びる人というのは、注意されるとモチベーションを下げやすいので、良いところをできるだけ褒めて、悪いところはやさしく諭すようにします。
叱られて伸びる人は、悪いところをことさら取り上げて、「このままでもいいけれど、こうすればもっとよくなる」という方向で注意をしましょう。
このとき、注意だけでなく、よかったところについてはしっかりと褒めることで、その人の実力を認めてあげることも大事なことです。
人は、褒められると「この方法でよかったんだ。自分の考え方は間違っていないのだ」と理解することができます。
しかし、褒められなければ、「このやり方は間違っていたのだろうか」と悩み、次回の仕事には、あえて別の方法をとり、そのよかったところは反映されなくなってしまうかもしれません。
また、褒めないと不満につながることがあります。
「あの人は自分のことをまったく褒めてくれない。嫌われているのではないか」「あの人は全然結果に対して評価してくれない」と不満を持ち始めると、仕事はするけれども、上司や先輩に対しては尊敬や信頼の感情を持たなくなっていきます。
こうなると、やがては自分勝手な単独行動をする社員になっていってしまいます。
褒め方には大きく以下の3つがあります。
大事なことは、いずれの方法で褒めるにしても、わざとらしくなく、かつ本人に伝わるように褒めなければならない、ということです。
褒め方の基本で、本人に直接良かった点を褒める方法です。
周りに人がいない時や、周りに人がいてもこちらに注意を払っていない時に褒める方法です。
仕事の良かった点を、話の中で、「こういうところはとてもよかった」と伝えます。
伝える場面は、仕事の時でも、食事など仕事外の時でも、廊下での立ち話の時でも構いません。
直接相手に言うということは、一対一で、本人にあなたの考えを伝えることなので、ダイレクトに相手に伝わります。
あなたが、相手から尊敬される存在であればあるほど、直接褒めるということに対して喜びや満足感を与えることができます。
こちらに皆の注目が集まっているときに、その人を褒める方法です。
皆の前で褒めることで、その人が認められているということを、全員に知らしめることができます。
すると、本人の功績が周知のものとなり、皆から褒められたり一目置かれたりすることになり、本人のやる気や満足感がアップします。
皆の前で褒めることは、直接本人だけに伝えるというよりは、周りの人に報告するような形で褒める、ということになります。
ですから、あなたが周りの人からも認められている立場であると、より効果的です。
また、皆の前で褒めることは、どのようにすれば結果を出せるのか、褒められるのか、ということが伝わるため、他の人にとっても参考になります。
本人がいないところで、他の人に、その人の仕事を褒める方法です。
この方法で褒める場合には、巡り巡って、本人に「あなたが褒めていた」ということが伝わらなければなりません。
本人が「あなたが褒めていた」という事実を知ることで、喜び、モチベーションをあげることになるからです。
ですから、その人と仲良くしている人に言ったり、飲み会などの多くの同僚がいるときに褒めるなど、伝わりやすい環境を選ぶことも重要になります。
また、本人に伝わらなかったとしても、「この人は褒めるときは褒める人だ」と知らしめることもできるし、その褒めている内容が納得のいくものであれば、「正当な評価をする人」として、他の社員からもあなたを信頼してもらえるようになります。
このように、「褒める」という行為は、決して悪いことではありません。
また、めったに褒めないような人がたまに褒めると効果的かというと、そうではなく、めったに褒めない人は「人のことを褒めない人」として不満の対象になってしまいます。
良いところを見つけたら、褒めるべき時は褒める、ということを、分け隔てなく行うことが、仕事を円滑に進めることにつながります。