これまで苦情対応には、真摯に接することが重要だと述べてきました。
相手の話をきちんと理解しようとしている態度を見せることで、相手に一種の安心感を与えることができます。
これまではそういった心構えの話をしてきました。
今回は、テクニックの話になります。
ここでいうテクニックとは、「相手の気持ちを少しだけよくさせる」手法のことです。
苦情対応は基本的には電話で行っていることを想定していますんどえ、しぐさは伝わりません。
ここでは、声色、スピード、言葉遣いなどを意味します。
このテクニックは、あくまでもサブ的な位置づけです。
まずは、真摯な態度で相手と接するという基本を身につけてください。
そういった心からにじみ出る態度を示すことができなければ、幾らテクニックだけを駆使したとしても、相手には「心がこもっていない」ということは、簡単に伝わってしまいます。
それでは、具体的にテクニックを見ていきましょう。
以下のようなものです。
まず、声のトーンや即dお、話し方のポイントとして、落ち着きすぎないことです。
声のトーンが低く、抑揚のない話し方は、相手に威圧感を与えます。
普通に対応しているつもりでも、相手に不快感を与えてしまうので、さらなるクレームを呼び込む可能性があります。
声のトーンはやや高めにすると、人間味が出てきます。
相手は、自分の言い分を素直に聞いてもらいたいと思っているわけですから、人間味のない相手では、素直に聞いてくれていると感じられません。
威圧感を与えられたと思わせてしまったら、「この人には何を言っても無駄だ」と思ってしまうでしょう。
その結果、「上司に代われ」と怒ったり、ネットに誹謗中傷を書きこまれたりすることになってしまいます。
あなたは自分で処理する羽目にならなくてよかったと思うかもしれません。
しかし、上司にしてみれば、「電話対応もろくにできな使えない社員」ということになります。
上司があなたを育てようと思ってくれればいいですが、諦められてしまったら、他の部署に異動になるか、そのまま放っておかれるけれども、周りからも敬遠される人になってしまうかもしれません。
そうなれば、平穏に社会人生活を送るという目的は達成できなくなってしまいます。
話すスピードはゆっくりであれば、しっかりと話を聞いてくれる感じがでます。
しかし、遅すぎると、落ち着きすぎに思われたり、間が抜けている感じが出ていると思われたりしてしまいます。
ですから、話すスピードは若干速いくらいでも構いません。
そうすれば、自分のクレームに対して、向こうも少し焦りながら、真剣に対応しようとしている感じが出ます。
ただし、速すぎると何を言っているのか理解できなくなるので、あくまで、「若干」を心がけてください。
普段の電話では、堂々と明るくしていた方が、相手に安心感を与えられます。
しかし、クレーム処理に関しては、堂々としていると、相手に不快感を与えてしまいます。
つまり、「この人はクレーム処理に慣れており、通り一遍の対応しかしてくれなさそうだ」「最終的にこちらの言い分を聞いてくれなさそうだ」と思われてしまう可能性があるのです。
クレーム処理では、相手には申し訳なさそうに、若干恐る恐る話している様子を出すと、相手にとっては話しやすくなります。
まずは、相手にイニシアチブをとらせましょう。
そして、相手にはずっとイニシアチブをとっていると思わせておいて、解決の方向を探り、誘導していきましょう。
相手の言うことに反論せずに、まずは受け止めましょう。
そのために、「なるほど」「ごもっとも」「おっしゃるとおり」という三つのキーワードが有効です。
また、話の合い間に、相手のこれまで行ったことを要約して確認をとりましょう。
繰り返して言うことで、相手には、「きちんと伝わっているな」と安心感を与えることができるし、こちらも相手の話を反芻することで、頭に焼き付けることができます。
¥上記のこと以外にも、細かい動作・話し方一つについても、気を配ると、余計な怒りを買わずに済みます。
相手は逆上しているわけですから、何か一つでも対応に不満なところがあれば、それもクレームの対象としてとりあげようとしてきます。
ですから、以下のようなことに気を配りましょう。
「あ~」「え~」といった、「それは困ったな」というようなニュアンスに聞こえてしまう言葉を挟むと、嫌がっているように聞こえてしまいます。
相手にしてみれば、「正当なクレームをつけているにも関わらず、嫌がるとは何事だ」ということになるのです。
誰が電話を受けているのか、きちんと名乗りましょう。
相手は自分の正体を明かして話している訳ですから、あなたも名乗らなければなりません。
相手に「名前は何というのか」というようなことを質問されるよりも前に名乗りましょう。
最もいいのは、電話をとった時に「はい、○○会社、××です」と名乗ってしまうことです。
しかし昨今は、迷惑な勧誘電話なども多いので、先に名乗ることが必ずしもいいことではありません。
ですから、クレームということがわかった時点か、解決への糸口が見え始めた頃に、タイミングを見て名乗りましょう。
最後に電話を切るときに名乗る場合は、その前に相手から名前を尋ねられる可能性も高くなってきます。
相手に名前を聞かれてから答えると、「こちらから聞かなければ、名乗るつもりはなかったのか」と怒ることがあります。
クレーム処理に限りませんが、かかってきた電話に対して、相手よりも先に電話を切ることはマナー違反です。
話が終わったと思っても、相手は最後に追加して何か言おうとする可能性もあります。
そのときに、早々に電話を切られてしまったら、「客よりも先に電話を切るとは何事だ」と、やっと収まりかけていた怒りが再燃してしまいます。
ですから、この基本マナーはおさえておきましょう。
話し合いによって解決の方法が決まったら、いつごろまでにそれを実行するのか、相手にきちんと伝えましょう。
そして、その期限は必ず守りましょう。
もし間に合わないようであれば、その前に連絡を入れて、期限の延長を申し出ましょう。
当然相手は怒るかもしれませんが、期限を延長しているにもかかわらず、何も連絡してこないよりはましです。
いつ解決してもらえるのか、わからないということは、相手を非常に苛立たせます。
期限を言わなかった場合、相手が待っていられるのはせいぜい30分から1時間です。
それ以上待たされると、「さっきの件はどうなった」と問い合わせがきてしまいます。
また、問い合わせが来ないからと言って、相手が怒っていないわけでもありません。
報告を電話でするのか、メールでするのか、手紙によってするのか、直接訪問するのか、処理した後の報告の方法を予め伝えましょう。
人によっては、「直接来て報告するのが当然だ」と思っている人もいるし、「電話で構わない」「メールでは失礼だ」と思う人もいます。
あなたの尺度で、「メールで報告すればいいだろう」と思っても、相手にとっては失礼な行為に思えることがあるのです。
ですから、解決方法が決まった時に、連絡をする場合には、電話かメールかFAXか、といったことを確認しておきましょう。
また、なぜその手段がいいのかも伝えられると、さらによいでしょう。
例えば、メールであれば、「記録に残すこともできるので、メールにします」などと言うことができます。
以上のように、相手の怒りを和らげる、嫌な気持ちを少しでも与えないようにする、ということが思いやりを持って行動することになるのです。