苦情対応に慣れていない人が、やってはいけないのにやってしまいがちな行為として、「上から目線」の話し方をしてしまうというものがあります。
上から目線といっても、あからさまに尊大な態度をとるわけではありません。
こちらの方が商品知識があるために、「お客さんはよくわかっていない、だから教えてあげる」という態度が、相手にとっては不愉快に感じるのです。
このような態度は、特に苦情電話を受けて、話し始めて間もない時にとってしまいがちです。
つまり、相手の問い合わせや苦情が、相手の勘違いや知識不足によるものだと思い込み、「こうすればいいんですよ」と教えてあげようとする際に、とってしまうのです。
既に同じような問題や問い合わせを受けており、その対処法として確立されているものがあれば、なおさらです。
そして、このような対処法が、相手の求めているものとは違った時に、最初は単なる問合せだったものが苦情に発展してしまいます。
まず、問合せや苦情に対して、毎回きちんと話を聞くようにしましょう。
相手が何に対して困っているのかを、様々な角度から質問を繰り返し、はっきりとさせます。
相手の話の意図を明確にする前に、こちらで勝手に「相手の言いたいことはこれだ」と決めつけてしまうと、間違った回答を相手にしてしまい、逆に相手を怒らせてしまいます。
それを避けるためには、真摯に相手の話に耳を傾けることです。
また、「我々は悪くない、悪いのは使い方をわかっていないあなただ」というような態度をとらないことです。
とはいえ、「うまくいかなかった」ということを伝えてくる人の多くは、なぜうまくいかなかったのか、こちらがその状況を再現できるように説明できる人は殆どいません。
だからこそ、あなたには相手が何をしようとして、どのような問題が起こったのか、ということを、しっかりと理解するヒアリングの能力が求められます。
世の中には、短気な人や気長な人がいますが、クレームを受けた時に、きちんとした対応をしなければならないことをわかっていない人は、うっかり怒ってしまいます。
しかし、一度でも起こってしまったら、逆に相手の怒りに火をつけるか、または後日、別のところに苦情を吐き出すかもしれません。
これは何としても避けなければならない事態です。
また、怒る気は全くなくても、決して自分を崩さず尊大な態度で対応する人もいます。
そして、自分が折れるくらいなら口論をして相手を言い負かそうとするのです。
これも当然ながら、相手の怒りに拍車をかけます。
さらに、そのどちらでもなく、ただぼんやりと適当な対応をする人も、クレームをつけている人は、自分の話をきちんと理解してもらえないことにイラつきを感じ、やはり怒りを増幅させてしまう結果になります。
このような態度は、あなたの普段の性格から来るものですから、無意識にそういう方向に行動してしまいます。
そして、「私は間違ってはいない」と正当化するのです。
しかし、それが良識ある社会人の態度でしょうか。
また、電話をとって対応したあなたは、言ってみれば、相手にとっては会社そのものです。
あなたはその瞬間から会社の評判を背負って立つという責任が生まれるのです。
そもそも、このような場合で、相手より優位に立つ必要はないのです。
あなたのなすべき仕事は、相手を打ち負かすことではありません。
一時の勝利に酔いしれたいという欲求を満たすだけのために、将来的な問題の芽を摘み残してしまっていることに気が付かなければなりません。
そのような不要なプライドは、この場面では捨てましょう。
無理に「お客様のため」などと考える必要はありません。
「会社を守るため、自分を殺して対応する」と考えればよいのです。